本文
幸田町東京2020オリンピックホストタウン事業 第1回 ハイチと愛知(その1) 国名の呼び方について
第1回 ハイチと愛知 (その1) - 国名の呼び方について
去る2019年8月22日、成瀬敦幸田町長とハンス・ラーセン・ハイチ・オリンピック委員会会長との間で、東京オリンピック・パラリンピックの際に幸田町がハイチ・オリンピック選手団のホストタウンとなる合意文書が署名されました。これにより、今夏、東京オリンピックが予定通り開催される場合には、競技終了後の8月9日と10日の両日に幸田町にハイチのオリンピック選手団が訪問して幸田町民の皆様と交流イベントを行う予定になっています。
ホストタウン署名式での成瀬敦幸田町長とラーセン会長の名代として参加したジョゼフ選手団長。撮影幸田町 |
この交流イベントに幸田町民の皆様に関心を持っていただくため、また、イベント終了後も幸田町とハイチの交流が続いていってほしいという願いから、町民の皆様にハイチ共和国のことについて知っていただく必要があると思い、このたび、幸田町の公式ホームページにハイチを紹介するコラムを掲載していただく運びとなりました。
私は、2018年12月にハイチ共和国に赴任する前から、この国に密かな親近感を抱いていました。ハイチという国名は、先住民族であるタイノ族がこの島を「山がちな土地」という意味でAyitiと呼んでいたことに由来します。ハイチでは、日常語として話されているクレオール語ではAyitiと表記してアイチ(より正確にはチはツィ)と発音し、もう一つの公用語であるフランス語でもアイティ[aiti](ティはチに近い短いティ。フランス語ではhは発音しません。)と発音します。つまり、愛知県の愛知の発音とハイチの発音とがほぼ同じであることが、愛知県出身である私のハイチへの親近感の理由でした。
Ayitiをかたどったメタルアート。撮影筆者 |
英語でHaitiはヘイティ[héiti]と発音することから想像するに、この国のことを「ハイチ」の発音で呼んでいるのは、きっと世界中で日本だけではないかと思います。アイチでもヘイティでもなく、ハイチと呼ぶことになった理由は定かではありませんが、愛知県出身の私としては、いっそのこと、日本でのハイチの呼称を「アイチ」に訂正したらどうかと考えます。そうすれば、日本の子供たちは小学校の社会科の授業で、アメリカ合衆国東南部のフロリダ州のちょっと南のカリブ海に、愛知と同じ発音の「アイチ」という島国が存在することを学ぶことになるでしょう。そうして日本人、とりわけ愛知県民の間でハイチの認知度が高まり、親近感が芽生えれば、日本とハイチ共和国との交流がもっと盛んになるのではないか、そんなふうに期待してしまいます。
ちなみに、私からハイチの知人に、自分は日本の「アイチ」県出身で、アイチには「知を愛する」や「愛を知る」という意味があることを伝えると、彼女又は彼らは新鮮に驚き、「あなたもアイチ人(アイシアン)なのか、アイチは日本ではそんな美しい意味なのか」と喜んでくれます。
幸田町、そして愛知県の多くの方々と、この親近感を共有できたらきっと素敵だろうな、そんな期待を込めながら、このコラムを書いています。
水野光明在ハイチ日本大使の紹介
幸田小学校、幸田中学校卒。創価大学大学院経済学研究科中退。1991年外務省入省。外務省では、主に貿易、国際協力、条約、国連関係の仕事に携わり、海外は、ガボン共和国、フランス、コンゴ民主共和国、スイス(ジュネーヴ)、国連開発計画(ニューヨーク本部)で勤務。2018年12月から現職。